[小児の予防歯科] <仕上げ磨き>
10歳まで保護者による仕上げ磨きが出来ればベストです。
<歯ブラシを嫌がる>
3歳児歯科健診などで最も多く相談されるのが歯ブラシを嫌がる です。 口腔は、栄養摂取の入口であると同時に毒物や危険物の入口でも あります。 したがって、本能的には他人に口の中をいじられるのは嫌いです。 それを学習で克服するのです。 自分に毒物や危険物を食べさせない母親や父親ならば口の中を いじらせても大丈夫だろうと学習して行くのです。 しかし、小さい時には歯ブラシをさせてくれたが、3歳になったら 歯磨きをさせてくれなくなったというパターンも少なくありません。 自我の芽生えです。
歯ブラシ(歯磨き)を嫌がる最大の原因は、母親や父親が歯磨き している姿を子どもに見せないことです。 子どもの歯磨き(仕上げ磨き)をリビングで行うとしたら母親と 父親とがリビングで歯磨きを行い、繰り返し子どもに見せることが 重要です。 できれば、時々子どもに歯磨きを手伝ってもらえばなお良いで しょう。 子どもは見ていないようで、常に親を観察しています。 親が歯を磨く姿を常に見ていれば、子どもの歯ブラシへの敷居は グンと下がります。
もうひとつ呼吸の問題があります。 ・鼻呼吸が上手くできない ・呼吸を止めていられる時間が短い などの場合、膝の上に寝かせて歯ブラシがつらいことがあります。 その場合には、椅子に座らせて正面から歯ブラシするのが良いで しょう。 また、少しずつ歯ブラシを行い、頻繁に呼吸を調える時間を与える のが良いでしょう。
<フッ素>
うがいができるようになるまでは、フッ素入り歯磨剤の使用は 避けるべきです。 フッ素塗布にも行ってはいけません。
フッ素は虫歯の発症を遅らせます。 昔は小学校低学年で虫歯になった歯が、今は高学年になってから 虫歯になるようなイメージです。 低学年では歯磨きが上手にできなった子どもが、高学年になれば 歯磨きが上手にできるようになれば、虫歯を回避できます。 つまり、フッ素は虫歯を減少させる可能性があります。
一方、フッ素は歯の硬さを少々軟らかくする副作用があります。 長い目でみれば、プラスマイナスゼロかちょっとプラスかちょっと マイナスかという微妙なところだと思います。
<栄養>
虫歯予防の最大の要因は栄養であると言っても、にわかには 信じられないかも知れません。 しかし、一生懸命に仕上げ磨きをしているにも関わらず ・虫歯が出来てしまった ・1歳6か月健診や3歳児健診で歯磨き状況「普通」と言われた ことがある保護者には理解できるかも知れません。 先進的な歯ブラシを入手できない先住民族(原住民)の子ども達に 虫歯が出来ないのが、その証拠です。 虫歯の予防にビタミンB6が有効であるとする研究があります。 10〜15歳の小児にビタミンB6含有のトローチを1日3回飲んで もらったところ、プラセボ群に比べて、有意に虫歯が減少しました。 また、500人以上の妊婦について行った同様の実験でも、虫歯予防 効果が認められています。 逆に、ビタミンB6欠乏で虫歯の増加や骨の変形が報告されています。 (出典:日本ビタミン学会編/ビタミンの辞典) ビタミンB6不足は、 ・アルコール摂取 ・経口避妊薬 ・パーキンソン病治療薬のL-ドーパ などで顕著に起こります。 ビタミンB6の吸収阻害や尿中への排泄促進によって、ビタミンB6 不足を生じます。 また、身体的・精神的ストレスによって、ビタミンB群の要求量が 高まるので、相対的にビタミンB6不足が起こります。 ビタミンB6が糖質代謝やアミノ酸代謝の多くの反応に関与して いるためです。 ビタミンB6は細胞の核に作用するホルモンの様な働きもします。 ビタミンB6以外にも虫歯と関係のある栄養素がありますので、 ビタミンB6だけを摂取すれば良いという話ではありませんが、 少なくともビタミンB6の不足を予防した方が良いと思います。
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