[虫歯は本当に減ったのか?]
<検診での診断基準が変わった> 学校の歯科検診において診査方法・診断基準が変わりました。 明らかな穴(齲窩)が認められない歯は、虫歯と診断しなく なりました。 エナメル質に穴(齲窩)が空いていなくても、象牙質が虫歯に なっていることは多々あります。 企業歯科検診も、自治体の節目歯科検診の診査方法や診断基準も 学校の歯科検診に準じて変更になりました。 これによって、虫歯の発見が1/5〜1/10に減少しました。
しかし、象牙質が虫歯になっていることは事実ですので、実質の 虫歯は減っていません。 この状態でエナメル質に穴が開くと、巨大な齲窩が現れていきなり 抜歯適応という悲惨な状態になります。 気が付いた時にはいきなり抜歯の適応という症例が増えつつ あります。
<フッ素の功罪> フッ素は虫歯の発症を後年に遅らせます。 昔は小学校低学年で虫歯になった歯が、今は高学年になってから 虫歯になるようなイメージです。 低学年では歯磨きが上手にできなった子どもが、高学年になれば 歯磨きが上手にできるようになれば、虫歯を回避できます。 つまり、フッ素は虫歯を減少させる可能性があります。
一方、フッ素は歯の硬さを少々軟らかくする副作用があります。 長い目でみれば、プラスマイナスゼロかちょっとプラスかちょっと マイナスかという微妙なところだと思います。
<保護者の仕上げ磨き> 虫歯予防・虫歯減少に最も寄与しているのは、仕上げ磨きをする 保護者が増えたことです。 唯一の弊害は、中学生になっても自分で歯を磨けない子どもが 出現しつつあることです。
<大人の歯磨き回数も増えている> 昔は1日1回磨くか磨かないかという人が多かったのが、 1日2回は常識になり、1日3回以上磨く人も増えています。 当然、虫歯の予防に有効です。
<栄養状態> 3大栄養素である炭水化物、タンパク質、脂質の摂取量が増えた ために、「ランパントカリエス」は激減しました。 ランパントカリエスとは、虫歯が突然に発現し、しかも多数の歯が 同時に罹患し、齲窩(虫歯の穴)が急速に深部へ進行するタイプの 虫歯です。 いわゆる「みそっ歯」です。 哺乳瓶でジュースを飲ませることによって発症する「哺乳瓶虫歯」も ランパントカリエスの一種です。
しかし、子どもも大人もビタミンやミネラルは全く足りていない ため、長い目でみれば、いずれは虫歯になります。 虫歯の発症は遅くはなっていますが、虫歯の減少にはつながりません。 < 上へ戻る >
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