ミニマル・インターベンション
MINIMAL INTERVENTION DENTISTRY(MI)

ミニマル・インターベンションとは体にあまり傷をつけないで
治療を行うことです。
  できるだけ削らない
  ・
できるだけ歯を残す
最小限の侵襲治療が「MI」の基本コンセプトです。
2000年、国際歯科連盟によって提唱された新しい概念です。

私が学生の時(バブル直前期)がちょうど、「保存修復学(虫歯
治療学)」が変化し始めた時でした。
大学で習った治療法は、国家試験が控えているため旧式のG.V.Black
博士が提唱した「う蝕部位の予防拡大処置」でした。
  (1)むし歯と疑わしき所は全部削り取る
  (2)その周囲の将来むし歯になりそうな部分も予防的に削り取る

私が学生の時に「コンポジットレジン」が登場しました。
コンポジットレジンは歯質に接着するため、治療法が大きく変化
しました。
  (1)むし歯と疑わしき所は全部削り取る
必要はありましたが、
  (2)その周囲の将来むし歯になりそうな部分は予防的に削り取る
必要はなくなりました。
大学病院での治療は国家試験とは無関係ですので、「コンポジット
レジン」中心の治療に移行して行きました。
しかし、まだコンポジットレジンの性能が悪かったために
  (1)むし歯と疑わしき所は全部削り取る
必要が残りました。

その後、コンポジットレジンの性能が日進月歩し、「接着性グラス
アイオノマーセメント」が登場し、
  ・むし歯の確信犯は全部削り取る
  ・むし歯と疑わしき所は残す
すなわち、少量の細菌はコンポジットレジンで埋めて窒息死させて
しまう治療法に変化しました。

さらに、各種抗菌剤による「抗菌療法」と組み合わせることによって、
中等度量の細菌も消毒殺菌し、コンポジットレジンで埋めてしまう
治療法に変化してきています。

しかし、噛み合わせ(咬合)や口腔機能によって、患者さんひとり
ひとり虫歯が進行しやすい部分が異なるため、それによって治療法や
使用材料を使い分ける必要があります。
例えば、噛み合わせが強くぶつかる部分では、エナメル質が目に
見えない程少しずつ欠けているので、それに対処する治療法や
使用材料を選択しなければなりません。
また、患者さんの栄養状態によって予後予測が異なるので、それも
考慮しなければなりません。


たかが大きくないむし歯を治療するにも
  ・栄養医学の知識
  ・咬合噛み合わせの知識
  ・顎関節の知識
  ・歯ぎしりの知識
  ・歯周病治療の知識
  ・口腔機能生理学の知識
  ・口腔衛生学の知識
  ・酸蝕症の知識
  ・口腔顔面痛の知識
などがないと「
ミニマル・インターベンション」できません。
虫歯で痛いのか、それ以外の原因による「関連痛」なのか
鑑別できないからです。






[FDI(国際歯科連盟)より公式声明のMIの原則]

2002年10月にオーストリアのヴィエナで開催された第90カイ国際
歯科連盟(FDI)世界会議の総会において、Minimal Interventionの
原則に関する公式声明が新たに採択された。
新しい原則では、う蝕原因菌の削減のみならず、感染予防や糖質
摂取削減なども含められ、患者教育に関する項目も新たに追加
されている。

う蝕処置における最小の侵襲
FDIは、齲蝕処置における最小の侵襲(Minimal Intervention)と
いう原則を支持する。

<MIの原則>
(1)口腔内細菌叢の変容
齲蝕は感染症であるため、感染の抑制、プラークコントロール、
そして糖質の摂取を削減することが第1である。
(2)患者教育
患者に対して食生活と口腔衛生による予防方法とともに、齲蝕の
病因について説明するべきである。
(3)エナメル質及び象牙質における非齲窩性病変の再石灰化 
唾液は脱灰/再石灰化のサイクルについて重要な役割を果たすため、
その量と性質は評価されるべきである。
エナメル白斑および象牙質の非齲窩性病変については、その進行が
停止、または再生されるということを示す確かな根拠があり、
これらの病変には再石灰化を促進させる処置をまず最初に行なう
べきである。
また、リコールの際にどのような進行も確認することができる
ように、病変の範囲は客観的に記録しておく必要がある。
(4)齲窩性病変への最小の侵襲による修復処置
侵襲的(外科的)な修復アプローチは、齲窩の進行が抑制できない
場合や審美的または機能的な要求がある場合などに限り適応される
べきである。
修復処置による侵襲は、健全歯質の保存を心がけ、脆弱エナメル質と
感染象牙質のみの削除に留め、これらの処置には、状況に応じて
手用切削器具、回転式切削器具、超音波装置、エアアブレイシブ
装置、レーザー装置などを利用する。
従って形成された窩洞は、従来からの決まった窩洞ではなく、
感染象牙質の広がりによって決定される独自の窩洞となる。
最小の窩洞形成によりグラスアイオノマーセメントやコンポジット
レジンなどの接着性材料を用いた充填が可能になる。
いくつかの研究では、グラスアイオノマーセメントが、脱灰された
未感染象牙質の再石灰化を促進することが報告されている。
しかしこれらについては更なる臨床研究が求められる。
(5)不良修復物のリペア
修復物の除去は、結果として健全歯質の削除を伴うことになり、
必然的に窩洞外形は大きくなる。
歯科医師の臨床的な判断により、修復物の再製ではなくリペア
対応を考慮しても良い。


(注)
この声明は全て自費治療の米国を前提に書かれていると思われます。
日本の医療保険には様々な規制がありますので、保険で治療可能
なのは一部の症例です。


 

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