[ジスキネジアとは] ジスキネジアとは反復性の不随意運動です。一方、ジストニアとは主に強直(固まってしまう)性の不随意運動です。稀に痙攣(けいれん)タイプの場合もあります。ジスキネジアは主に、 ・精神科の薬剤に伴う副作用 ・パーキンソン病によって発症します。このうち、精神科の薬剤に伴う副作用のジスキネジアを「遅発性ジストニア(オーラルジスキネジア)」と呼びます。[遅発性ジスキネジアとは] 遅発性ジスキネジアは主に統合失調症治療薬である抗精神病薬の副作用で起こります。定型抗精神病薬と非抗精神病薬とどちらの薬剤でも起こります。抗精神病薬の場合、若い男性で自分で薬の量を調整する患者さんに多いと言われています。軽度のうつ状態の治療薬である抗不安薬では遅発性ジスキネジアは起こり難いと言われていますが、高齢者の場合には発症しやすい印象があります。プリンペラン(メトクロプラミド)(消化器機能異常改善薬)やピレチア(プロメタジン)(抗ヒスタミン薬/パーキンソン治療薬)、抗痙攣(けいれん)薬でも発症します。[オーラルジスキネジアの症状] ・舌がかってに動く ・舌がかってに動いて、舌打ちをする ・舌と口唇がかってに動く(モグモグ運動) ・下顎がかってに動く(病的歯ぎしり) ・唾液過多症 ・舌痛症などを併発します。オーラルジスキネジア自体が辛いこともあります。オーラルジスキネジア自体は辛くないけれど、合併症である唾液過多症や舌痛症が辛くて死にたいと訴えることもあります。本人よりも家族の方が辛いことも少なくありません。延々と家族に泣かれることもあります。この点からも予防が重要です。[オーラルジスキネジアの予防法] 遅発性ジスキネジアは難治性ですので、予防が重要です。精神疾患を自覚した場合、まずは、 ・血糖調節障害(低血糖) ・栄養障害(栄養素の不足や過剰) ・甲状腺などのホルモン疾患を調べてもらうことが重要です。当院でも栄養医学療法の一環としてスクリーング検査を行います。検査で異常値が出れた場合には専門医に紹介しています。<当院症例> 高齢女性、うつ症状のためA内科とB精神科に長年通院していました。A内科ではB精神科に通院していることは内緒で、B精神でもA内科に通院していることは内緒でした。A内科とB精神科で似たような薬が重複して処方されていました。重度のオーラルジスキネジアがあり、血液検査をしてみると甲状腺機能低下症の疑いがありました。甲状腺機能低下症では、うつ病様の症状が出ます。もしかしたら、甲状腺疾患の治療薬だけで済んで、うつ病治療薬は不要だったかも知れません。そうであれば重度のオーラルジスキネジアを発症することもなかったことでしょう。[遅発性ジスキネジアと喫煙との関係] 遅発性ジスキネジア(オーラルジスキネジア)は喫煙によって数倍発症率が高くなるという調査研究があります。精神症状を自覚した時点で禁煙を始めましょう。上記予防対策を行っても改善せず、最後の最後に精神科出身の先生を受診する時点では完全に禁煙していることが重要です。受動喫煙でも発症率が高くなる可能性がありますので、家族で禁煙するようにしましょう。[オーラルジスキネジアの治療法] <原因薬剤の断薬・減量・変更> 遅発性ジスキネジア(オーラルジスキネジア)の原因と推定される薬剤の中止や減量、他の薬剤への変更が基本となります。<栄養医学療法> 栄養状態が悪いと、薬の効果が出にくいため薬の量を増やさざるを得ません。また、栄養状態が悪いと、薬の副作用が出やすくなります。 ・ビタミンB6(ピリドキシン) ・ビタミンE ・マグネシウム ・リチウムなどが有効なことがあります。当院で検査〜治療を行います。<ボトックス治療> ボツリヌス毒素注入療法が有効なことがあります。有効率が高いという専門家もいますが、ほとんど効果が期待できないという専門家もいます。専門クリニックでの治療になります。<オーラルジスキネジアの専門外来> 日本大学松戸歯学部付属病院・神経歯科外来にて診察してもらえるようです。
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オーラルジスキネジア 更新日:2018年10月23日