産業革命とくる病とビタミンD不足
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[ビタミンD不足は、子どもにも深刻な事態をまねきます]
(NHK出版 病の起源) (第2集 骨と皮膚の病 〜それは“出アフリカ”に始まった〜)
<イギリス・ロンドン> かつて深刻なビタミンD不足に悩まされていました。 特にその犠牲となったのが子どもたちでした。 ロンドン博物館の地下倉庫に、当時の悲惨な状況を物語る資料がありました。 ロンドン中の遺跡から発屈された17,000体にも及ぶ遺骨です。 ここに保管されているのは、産業革命期の遺跡から発掘された骨です。
中にはクル病を患っていた、こどもの骨がたくさんあります。 真っ直ぐなはずの太ももの骨が、こんなに曲がっています。 クル病は、ビタミンDが不足し全身の骨が柔らかくなる子どもの病気です。 自分の体重を支えきれずに、足の骨が変形してしまいます。
18世紀半ばに始まった産業革命。 急速に工業化したロンドンの空は、スモックで覆われていました。 日光がさえぎられ、人々はビタミンD不足に陥ったのです。 深刻なビタミンD不足によって、命を奪われた子どもも大勢いたと考えられています。
<ロンドン博物館 ビル・ホワイト上級学芸員> 「十分な日光にあたれず、クル病になっていた子どもの骨は1割にものぼっていました。 当時は、何が起こっているのか知るすべすらなかったでしょう」
それから250年、スモッグが消えたはずのイギリスで、いま再びビタミンD不足が問題になって います。
4年前インドからイギリスに移住してきたウメッシュさん一家。 両親と5歳になる女の子そして1歳2ケ月になる男の子の4人家族です。 アラン君は、生後6ケ月のとき突然引付けを起こし倒れてしまいました。 姉のアリーナちゃんと元気に遊んでいたときのことでした。 かかえて揺すっても何の反応もなくそのうちケイレンし始めたのです。 本当に怖かったといいます。 病院に運びこまれたアラン君、ビタミンDが極度に少ない「ビタミンD欠乏症」と 診断されました。 血液中のカルシウム濃度が低下したため、全身の筋肉がケイレンを起こしたのです!
ホルモンの研究をしている専門家は、その原因がアラン君一家の肌の色にあると考えています。
(免疫情報センター ニコラス・ハービー博士) 「イギリスでは肌の色の濃い人の90%以上がビタミンD不足であるといわれています。 とても深刻な問題です。」
アラン君の褐色の肌を作っているのはメラニンという色素です。
メラニンは日本人の肌にもあり紫外線をブロックしています。 色の濃い肌にはメラニンがたくさんあります。 日光が弱いイギリスでは紫外線がブロックされすぎて十分なビタミンDが作れないのです。
ウメッシュさん一家は、全員がビタミンD不足の恐れがあります。 なぜアラン君だけが重いビタミンD欠乏症に陥ったのでしょうか。 母親はアラン君をイギリスで身ごもりました。 肌にメラニンが多いため妊娠中たくさんのビタミンDを作ることが出来ませんでした。 アラン君は、お腹の中にいるときからずっと十分なビタミンDを得ていなかったと考えられて います。
両親は今、アラン君の歯を心配しています。 カルシウム不足だったせいか通常生後6ケ月ぐらいで生え始める歯が1歳2ケ月になる今も まだ1本も生えていないのです。 後3〜4ケ月たっても歯が生えてこなかったら医者に診てもらおうと思っています。
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NHK 病の起源 取材班 「NHKスペシャル病の起源(1) 睡眠時無呼吸症/骨と皮膚の病/腰痛」
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